Popular Breakfasts in Europe – ヨーロッパの朝ごはん –

ボクスティ(Boxty)、アイルランド

アイルランドの伝統的なポテトパンケーキ。細かくすりおろしたジャガイモやバター、小麦粉などから作られるもので、そのままいただくこともあれば、生地に肉や野菜を巻いていただくこともあります。アイルランドの祝日・聖ブリジットの日(2月1日)の定番料理としても知られています。

フル・ブレックファスト (Full Breakfast)、イギリス

卵やベイクドトマト、マッシュルーム、ベイクドビーンズ、ブラックプディングなどがワンプレートに盛り付けられた、イギリスの伝統的な料理。

“The English Breakfast Society”によれば、イングリッシュ・ブレックファーストの起源は14 ~ 15世紀にさかのぼるとされています。当時、「ジェントリ」と呼ばれる地主貴族層たちが友人や親戚、近隣の人々に朝食を振舞う習慣がありました。これは、その領地の食材の豊かさや料理人の腕の良さを披露する機会でもありました。

イングリッシュ・ブレックファーストが広く普及したのは18 ~ 19世紀の産業革命期。工業化に伴い、朝から晩まで長時間働いていた労働者にとって貴重なエネルギー源として定着していったそうです。

コルネット (Cornetto)、イタリア

イタリア版「クロワッサン」。北イタリアでは「ブリオッシュ」の名称で呼ばれています。粉砂糖がかかっていたり、ジャムやクリーム、チョコレートが入っていたりと多種多様なものがあり、コルネットとカプチーノ (またはエスプレッソ) は朝の定番メニューとして親しまれています。

その原型は、オーストリアの三日月型のパン「キプフェル」であるとされ、17世紀頃にウィーンから当時のヴェネツィア共和国に伝わったといわれています。

シルニキ (Syrniki)、ウクライナ

カッテージチーズが入った生地を丸く成形し、バターで揚げて作られるミニパンケーキ。朝食や軽食として食されることが一般的で、ジャムやサワークリーム、ハチミツ、練乳などと一緒に食べます。ウクライナの他にも、ロシアや東欧諸国で広く親しまれています。

カイザーゼンメル (Kaisersemmel)、オーストリア

オーストリア発祥の小型のパン。生地の表面に切れ目が放射状に入っているのが特徴で、ゴマやヒマワリの種、ポピーシードなどがトッピングされたものもあります。朝食にバターやジャムとともに供されるか、もしくは具材を挟んでサンドイッチとして供されるのが一般的です。

その名称は “Kaiser” =「皇帝」、 “Semmel” =「ロールパン」を意味し、オーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフ1世に因んで名付けられたという説がありますが、カイザーゼンメルの起源については諸説存在します。

ハーゲルスラッハ & フロッケン  (Hagelslag & Vlokken)、オランダ

オランダのパン専用のトッピングチョコレート。「ハーゲルスラッハ」は粒状、「フロッケン」はフレーク状のチョコレートスプレーを言い、バターを塗ったパンにたっぷりとかけて朝食や昼食として食されるのが一般的です。代表的なブランドとして“De Ruijter”や“ Venz”などがあります。

クルーリ (Koulouri)、ギリシャ

ゴマがまぶされたリング状のパン。パン屋や露店で供されており、チョコレートスプレッドやタヒニ (ゴマペースト)、チーズが入っているものなど様々な種類があります。その歴史はビザンツ帝国時代にさかのぼるともいわれており、現在では朝食の定番メニューの一つとして親しまれています。

チルブリ (Chirbuli)、ジョージア

ジョージア・アジャラ地方の郷土料理。油 (またはバター) で炒めた玉ねぎに、細かく刻んだトマトやクルミ、ニンニクなどの食材を加え、さらに卵を割り入れて煮込みます。バジルやコリアンダー、タイム、赤唐辛子などの様々なハーブとスパイスが入った風味豊かな料理で、朝食として供されるのが一般的です。

レシュティ (Rösti)、スイス

スイスのポテトパンケーキ。卵・チーズをのせたり、野菜・ベーコンを混ぜたりなど様々な種類があります。主にドイツ語圏で供されることが多く、フランス語圏ではあまり親しまれていないことから、これらの言語圏の境界線は「レシュティの溝 (Röstigraben)」と呼ばれています。

もともとスイス中西部・ベルン州の農民が朝食として食していたという説がありますが、実際はレシュティの起源に関して明確に記された資料や文献は見つかっていないそうです。

クネッケブロード (Knäckebröd)、スウェーデン

ライ麦粉から作られる平たいクラッカー状のパン。スウェーデンをはじめ、北欧諸国で親しまれており、バターやハム、野菜をのせたオープンサンドにして供されるのが一般的です。数百年の歴史があると言われており、その名称は「パリッ」と音を立てることを意味する「クラッケン」に由来するそうです。

ドロップ・スコーン (Drop Scone)、スコットランド

「スコッチパンケーキ」とも呼ばれるスコットランドのミニパンケーキ。1959年にアメリカのアイゼンハウアー大統領がスコットランドのバルモラル城を訪れた際に、エリザベス女王自らが振舞ったことでも知られています。朝食や軽食として食されることが多く、バターやジャム、メープルシロップなどを添えて供されるのが一般的です。

チュロス (Churros)、スペイン

スペインで朝食や軽食として親しまれている揚げ菓子。砂糖をまぶしたり、ホットチョコレートに浸したりしていただきます。その起源は諸説あり、16世紀初頭の中国・明に訪れたポルトガル人が、中国の揚げパン「油条(Youtiao)」を模したものとしてチュロスが作られ始めた説。

他には、スペインの羊飼いが長期に渡る野外活動でも作ることができるパンの代用としてチュロスが作られるようになった説などがあります。

バーボフカ (Babovka)、チェコ

「クグロフ型」と呼ばれる専用の型に入れてオーブンで焼き上げるチェコのケーキ。フランスでは「クグロフ(Kouglof)」ドイツやオーストリアでは「グーゲルフップフ(Gugelhupf)」と呼ばれており、ヨーロッパで広く親しまれている焼き菓子として知られています。

国や地域によって様々な種類がありますが、チェコで代表的なものとして生地にココアを混ぜこんだマーブルケーキがあります。おやつとして食べるのが定番ですが、朝食として食べることもあります。

デニッシュ / ヴィエナブロート (Danish Pastry /Wienerbrød)、デンマーク

パイ状の生地を折り込んで焼いたデンマークのペストリー。19世紀オーストリアのパン職人から伝わったことから、デンマーク国内では “Wienerbrød (ウィーン風のパン)”と呼ばれています。リンゴやラズベリー、バニラカスタード、アーモンドペーストなど様々な種類があります。

19世紀半ばのデンマークでは、パン屋とパン職人の間で賃金を巡る争いが勃発し、パン職人によるストライキが行われました。ストライキによって人手不足に陥ったパン屋は、海外から職人を雇うようになり、その際にオーストリアのペストリーの製法が伝わったとされています。

労働争議が収まった後も、この製法で作られたパンは人気を博し、デンマークで広く親しまれるようになったそうです。

ブロート / クラインケベック (Kleingebäckmin/ Brot)、ドイツ

ドイツのパン。ドイツは世界で最もパンの種類が多く、大型のパンをブロート、小型のパンをクラインケベックといいます。朝食にはもちろん、昼夕、間食などあらゆる機会に食され、オープンサンドにしたり、バター・ジャムを付けたりしていただきます。

カルヤランピーラッカ (Karjalanpiirakka)、フィンランド

フィンランド東部カレリア地方の伝統料理。ライ麦の生地にミルク粥やマッシュポテトのせて焼き、最後にムナボイ(卵とバターを混ぜ合わせたもの)をトッピングして作られます。

カルヤランピーラッカは、伝統的なレシピや製法に基づいて製造された製品であることを保証する「伝統的特産品保証(TSG)」に2003年に認定されました。

その歴史は17~18世紀頃のカレリア地方発祥とされており、1941年~1944年にかけてフィンランドとソ連の間で起こった「継続戦争」の避難民によってフィンランドをはじめ、その周辺地域に伝えられたといわれています。

ヴィエノワズリー (Viennoiserie)、フランス

バターや砂糖、卵をふんだんに使用して作られたフランスのパン菓子。その名称はフランス語で「ウィーンのもの」を意味し、代表的なものとしてクロワッサンやパン・オ・ショコラ、ブリオッシュなどがあります。

1893年バターを生地に折り込んで作るウィーンスタイルのペストリーの製造技術が、オーストリア実業家のアウグスト・ツァング (August Zang) 氏によって、フランスに伝えられたのが始まりであるといわれています。

バニツァ (Banitsa)、ブルガリア

ブルガリアの朝食の定番の一つ。薄いフィロ生地にチーズやほうれん草、かぼちゃなど様々な食材を包んで焼き上げたもので、地域や家庭によって多種多様のバニツァが作られます。

ブルガリアでは新年を祝う行事食としても供されることがあり、この時期のバニツァには中にコインや願い事が書かれた紙が詰められて作られます。

ドラニキ (Draniki)、ベラルーシ

ベラルーシで親しまれているジャガイモのパンケーキ。すりおろしたジャガイモに卵と小麦粉を加え、フライパンでカリカリに焼き上げます。ひき肉を加えたり、ニンニクで香り付けしたりアレンジには様々なものがあり、サワークリームと一緒にいただきます。

ベルギーワッフル (Belgian Waffles)、ベルギー

生地を格子状の鉄板に挟んで焼きあげたベルギーのお菓子。甘さ控えめの四角い形をしたブリュッセル・ワッフルと甘くて丸い形をしたリエージュ・ワッフルの2種類があります。

街角のスタンドなどでは、フルーツやホイップクリーム、チョコレートソースなど様々なトッピングがされたワッフルが店頭に並べられています 。

ラツヒ (Racuchy)、ポーランド

生地にりんごが加えられたポーランドのパンケーキ。朝食や昼食として食されることが多く、粉砂糖をふりかけたり、ジャムやクリームなどを添えたりして供されるのが一般的です。ポーランドは世界でも有数のりんご生産国として知られており、国内にはりんごを使用したデザートや料理が多く存在します。

パステル・デ・ナタ (Pastéis de Nata)、ポルトガル

卵黄をふんだんに用いたカスタードクリームを丸い生地に詰めて焼いたポルトガルのタルト。その歴史は、リスボンのベレン地区にあるジェロニモス修道院の修道女たちによって考案されたといわれています。

しかし、1820年のポルトガル王国で起こった「自由主義革命」によって国内の修道院が閉鎖に追い込まれ、行き場をなくした修道士たちはパステル・デ・ナタを売って生計を立てたのだそうです。

パステル・デ・ナタの伝統的なレシピは、1837年に創業された菓子店 “Pastéis de Belém” によって受け継がれ、今でもなお、多くの人々に愛され続けています。

ブリヌイ (Blini)、ロシア

そば粉の生地を薄く焼いたロシアのパンケーキ。ジャムやサワークリームを塗ったり、イクラやサーモンを包んだりしていただきます。

ブリヌイは、ロシアの春を迎える祭り「マースレニツァ (Mасленица)」では欠かせない料理としても知られており、その丸い形状は太陽を象徴しているといわれています。

マースレニツァは、古代スラブの伝統的な祭りで、10世紀にロシアがキリスト教を受けれる以前から伝えられてきました。木の枝や藁で作られた「マースレ二ツァ人形」を燃やして冬に別れを告げ、春の訪れをお祝いします。

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