

アイリッシュコーヒー (Irish Coffee)、アイルランド
ホットコーヒーにウイスキーと砂糖を加え、上にホイップクリームを浮かべたアイルランドの飲み物。1943年、アイルランドの西海岸にあるフォインズ水上飛行場のシェフ、ジョー・シェリダン氏によって考案されました。
当時、給油のために飛行艇を降ろされた乗客たちは、ボートで川を渡って飛行場の待合室に向かわなければなりませんでした。
特に冬の季節は、厳寒の中移動しなければならずジョー氏は身体の冷え切った乗客たちのために、アイリッシュコーヒーを作ったと言われています。

エスプレッソマティーニ (Espresso Martini)、イギリス
ウォッカやエスプレッソ、コーヒーリキュールなどから作られるカクテル。ブランブルと同様、イギリスの有名なバーテンダー、ディック・ブラッドセルによって考案されました。
当時イギリスのトップモデルの「目が覚めるようなお酒」というリクエストによって誕生したカクテルで、クリーミーな泡の上に数個のコーヒー豆が添えられているのが特徴の一つです。

ビチェリン (Bicerin)、イタリア
イタリア北部・トリノ発祥の古典的なコーヒー。ホットチョコレートとエスプレッソ、生クリームから作られ、透明なグラスに注がれて提供されます。1763年創業の老舗カフェ“Caffè Al Bicerin”で考案されました。
このカフェは、数々の著名人から愛された有名な店ですが、中でもイタリア最後の王・ウンベルト2世と王妃マリーア・ジョゼが訪れたカフェとして有名です。

ヴィーナー・メランジュ (Wiener Melange)、オーストリア
ミルク入りのエスプレッソにミルクフォームを浮かべたオーストリアのコーヒー。名称は “Wiener Melange” (ウィーン風の混ぜたもの)を意味します。
ウィーンのカフェでは定番のコーヒーとして親しまれ、その起源は19世紀頃だといわれています。ウィーンのコーヒーハウス文化は、300年以上の歴史があり、1680年代第一次ウィーン包囲戦でトルコ軍から伝わったことが始まりであるとされています。

フラッペ (Frappe)、ギリシャ
フランス語で「氷で冷やしたもの」を意味するギリシャのアイスコーヒー。インスタントコーヒーと水をシェイカーで泡立て、氷の入ったグラスに注いで作られる飲み物で、好みで砂糖やミルクを追加していただきます。
フラッペは、1957年にギリシャで開催されたテッサロキニ国際見本市で考案されました。
休憩の際、コーヒーを作るためのお湯がなかったため、世界最大の食品・飲料会社ネスレの従業員がインスタントコーヒーと水、氷をシェーカーに入れ、即席のアイスコーヒーを作ったことが始まりであるといわれています。

バラキート (Barraquito)、スペイン
スペイン・カナリア諸島で親しまれているリキュール入りのコーヒー。グラスの中にコンデンスミルク、リコール43 (スペインのリキュール)、エスプレッソ、ミルクフォームの順に加えて、最後にシナモンとレモンピールをトッピングして作られます。
それぞれの材料が層を成した色味がとても美しく、思わず飲むのをためらってしまいそうなコーヒーです。

ファリサイ (Pharisäer)、ドイツ
ファリサイは、ラム酒と砂糖を加えたコーヒーにホイップクリームを浮かべたドイツの飲み物です。長年ドイツで親しまれてきた飲み方で、意外にもコーヒーとラム酒の相性は抜群なのだとか。
かつて、酒好きな農民がこっそり酒をたしなむためにコーヒーにラム酒を加えて飲んでいたところ、牧師に見つかって「Du Pharisäer!( 偽善者だ!)」と叱責された逸話が残されており、「ファリサイ」の名称の由来になりました。

カフェオスト (Kaffeost)、フィンランド
カフェオストは、フィンランドで親しまれているチーズ入りのコーヒーです。特にフィンランドのカイヌ地方でよく飲まれているコーヒーで、「レイパユースト」と呼ばれる伝統的なチーズが使われています。
浅煎り豆を使用した酸味の強いコーヒーとチーズの相性は抜群で、コーヒーを飲み終えた後にカップの底に残ったチーズをすくっていただくのが一般的です。コーヒーの入れ物には、北欧の伝統的な木製のマグカップ「ククサ」がよく使われます。

カフェオレ (Café au Lait)、フランス
コーヒーと温めたミルクをほぼ同量、カップに注いだフランス発祥の飲み物。特に朝食に好んで飲まれ、持ち手のない大ぶりなカップ「カフェオレボウル」に入れて供されることが多いそうです。1685年、フランスの著名な医師・モナン氏がカフェオレを考案したのがはじまりだとされています。

マザグラン (Mazagran)、ポルトガル
マザグランは、ポルトガルで親しまれているレモンジュース入りのアイスコーヒーです。もとはアルジェリア発祥のコーヒーで、マザグランはフランス語で「冷やしコーヒー」を意味します。
レモンの酸味によってすっきりとした味わいになり、一味違うコーヒーを堪能することができます。

フラットホワイト (Flat White)、オーストラリア
フラットホワイトは、エスプレッソにミルクを合わせたオーストラリアのコーヒーです。表面にきめ細かく泡立てられたフォームミルクが浮かべられていて、エスプレッソの深みのある苦みやコクとミルクの甘さが同時に楽しめます。
かつてこのコーヒーは、「ホワイトコーヒー」と呼ばれていましたが、フォームミルクが平ら( =フラット)に乗せられた見た目から、「フラットホワイト」と呼ばれるようになったといわれています。

カフェ・ラグリマ (Cafe Lagrima)、アルゼンチン
カフェ・ラグリマは、アルゼンチンで親しまれているミルクコーヒーです。ラグリマはスペイン語で「涙」という意味で、スチームミルクの中に涙のような少量のコーヒーを加えることからこのような名称が付けられたといわれています。
いわばコーヒー風味のホットミルクで、コーヒー独特の苦みや酸味のないやさしい味わいが口の中に広がります。

カフェ・デ・オジャ (Café de olla)、メキシコ
カフェ・デ・オジャは、メキシコで古くから親しまれているコーヒーです。コーヒーにクローブ、アニス、シナモンなどのスパイスや「ピロンシージョ」と呼ばれるキビ砂糖が加えられた飲み物で、鍋で煮出して作られます。
スペイン語で「ポットコーヒー」を意味するカフェ・デ・オジャは、メキシコの伝統的な陶器が使われています。

カフェジーニョ(Cafezinho)、ブラジル
カフェジーニョは、ブラジルで親しまれているコーヒーです。「少量のコーヒー」という意味の名称で、苦みが強く独特な風味が特徴の飲み物です。深く焙煎された豆を濃く抽出したコーヒーに、砂糖をたっぷり入れていただきます。

テュルク・カフヴェスィ (Türk Kahvesi)、トルコ
トルコの伝統的なコーヒー。トルコの小鍋に粉状に挽いたコーヒー豆と水、砂糖を加えて煮出したもので、濾さずにカップに注いでいただきます。
いただく際は、カップ内のコーヒーの粉が沈殿するのを待ってから、上澄みだけを飲むようにします。トルコでは、コーヒーを飲み終えた後にカップの底に残った粉の状態で運勢を占う「コーヒー占い」をするのが習慣なのだとか。
コーヒーがトルコに伝わったのは、16世紀頃のオスマン帝国時代。イエメン知事・オズデミル・パシャによって宮殿に持ち込まれ、瞬く間に普及していきました。店内では、政治談議や詩の朗読会などが行われるなど、ヨーロッパよりも先んじてコーヒー文化が培われていきました。

ブンナ (Bunna)、エチオピア
コーヒーの発祥の地であるエチオピアで親しまれているコーヒーです。コーヒーの生豆をローストし、臼で叩粉状に潰したものをジェベナと呼ばれる素焼きのポットで煮出します。
砂糖やミルクなどは加えず、蒸しパン(ダボ)、麦やナッツを煎ったスナック(コロ)、ポップコーンなどと一緒にいただきます。エチオピアには「コーヒーセレモニー」と呼ばれる習慣があり、コーヒーでゲストをもてなす文化が古くから根付いています。

カフェ・トゥーバ (Café Touba)、セネガル
カフェ・トゥーバは、セネガルのスパイス入りのコーヒー。コーヒー豆とギニアペッパーを煎って濃く淹れたもので、とてもスパイシーなのが特徴です。
かつてはセネガルの聖都トゥーバに存在するイスラーム神秘主義教団「ムリッド教団」が飲む飲み物として知られていましたが、今や宗派を問わずセネガル全土で親しまれているそう。

コピ・ルアク (Kopi Luwak)、インドネシア
世界で最も高価なコーヒーとして知られるインドネシアのコーヒー。ジャコウネコが食べたコーヒーの果実から、未消化で糞として排出された豆を洗浄、乾燥、焙煎させたものを使用して作られます。ジャコウネコの腸内で発酵することによって、コーヒー豆に独特な香りと味わいが生まれるのだそう。

ダルゴナ (Dalgona)、韓国
韓国で親しまれているホイップコーヒー。インスタントコーヒーや砂糖、お湯をホイップしたものをミルクの上に乗せて作られます。
2020年、コロナウィルス感染拡大による外出自粛中に、自宅でも簡単に作れることからTiktokやInstagramを中心に人々の間で話題になりました。
その前身は中国・マカオのコーヒーで、韓国で紹介された際に“ダルゴナ”(韓国語で「カルメ焼き」の意味)と名づけられたそうです。

鴛鴦茶 (Yuanyang)、中国
鴛鴦茶(えんおうちゃ)は、中国・香港で親しまれている「コーヒー紅茶」です。広東語で「ユンヨン」と呼ばれる飲み物で、コンデンス入りの紅茶とコーヒーを混ぜ合わせて作られます。
アレンジの幅は広く、タピオカやレモン、香辛料などが入ったバラエティー豊かな鴛鴦茶が楽しめます。

エッグコーヒー (Egg Coffee)、ベトナム
ベトナム・ハノイ発祥のコーヒー。卵黄とコンデンスミルクを泡立てたものを上から浮かべたコーヒーで、ベトナム語で「カフェ・チュン (Cà phê trứng)」と呼ばれています。
その起源は1950年代のインドシナ戦争中、牛乳が不足していたため 代わりに卵を使ったことでエッグコーヒーが生み出されました。

コピ (Kopi)、シンガポール
シンガポールをはじめとした東南アジアで親しまれているコーヒー。コーヒー豆は苦みの強いロブスタ種が使われていて、この苦みを和らげるべく砂糖やバター、コーンスターチなどを加えて深く焙煎されています。
砂糖とコンデンスミルクが入ったものが一般的ですが、お店によってはブラック、砂糖のみ、ミルクのみなど好みの飲み方を注文できるようです。
シンガポールには「カヤトースト」と呼ばれるココナッツミルクをベースとしたスプレッドが塗られたトーストがあり、朝食としてコピと一緒に頂くのが定番の一つとして知られています。
出典
・tasteatlas:https://www.tasteatlas.com/coffee
・Conde Nast Traveller:https://www.cntraveler.com/galleries/2014-11-10/coffee-around-the-world-how-to-get-your-caffeine-fix-abroad
・CNN:https://edition.cnn.com/travel/article/best-coffee-cities
・全日本コーヒー協会:https://coffee.ajca.or.jp/webmagazine/wonderland/
・コーヒーの歴史 (「食」の図書館) ジョナサン・モリス (著), 龍 和子 (翻訳)
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