バームブラック (Barmbrack)、アイルランド
アイルランドの伝統的なパン(ケーキ)。アイルランドでは毎年ハロウィンの時期に食されるもので、ゲール語で「斑点のあるパン」を意味します。生地の中には硬貨や指輪、布切れなどが入っており、どのアイテムが当たるかで運勢を占う習慣があります。
トライフル (Trifle)、イギリス
イギリスの伝統的な郷土菓子。洋酒を染み込ませたスポンジケーキやジャム、カスタードクリームなどを層状に重ねて、生クリームとフルーツで飾りつけをしたデザートです。
かつては余ったスポンジケーキなどあり合わせの材料で作られていたことから「つまらないもの」という意味合いがあるそう。
ゼッポレ ディ サン ジュゼッペ (Zeppole di San Giuseppe)、イタリア
イタリアのお菓子。揚げシューのような生地に、カスタードクリームと果実のシロップ漬けを乗せたもので、イタリアの父の日(3/19)に食されます。
の養父/聖ヨセフ(サン・ジュゼッペ)を祝う日でもあり、一説には彼が揚げ物屋を営んでいたことから、このお菓子が食べられるようになったのだとか。
ウェルッシュケーキ (Welsh Cake)、ウェールズ
ウェールズの伝統的なお菓子。ウェールズ語で「ピカーラマイン(=石の上のケーキ)」を意味し、平たい鉄板で焼き上げて作られます。生地の中にカレンツ(干しブドウ) やスパイス(シナモンやナツメグなど)が加えられたもので、バターを塗ったり、砂糖をまぶしたりしていただきます。
スィルニキ (Syrnyky)、ウクライナ
カッテージチーズを使用して作られたウクライナのパンケーキ。おやつや朝食として食されることが多く、ジャムやサワークリームと一緒にいただきます。ロシアやウクライナをはじめ、東欧諸国で親しまれています。
アプフェルシュトゥルーデル (Apfelstrudel)、オーストリア
オーストリアの伝統的な郷土菓子。リンゴやレーズンやナッツ、シナモンを薄く伸ばした生地で巻いて焼き上げたお菓子です。トルコのバクラヴァにルーツを持つといわれており、およそ400年の歴史を誇ります。
トンプース (Tompouce)、オランダ
オランダの郷土菓子のひとつ。パイ生地にカスタードクリームが挟まっているお菓子で、生地の表面にはピンク色のアイシングがコーティングされています。
キングスデー(国王の日)などの祝日には、オランダのナショナルカラーであるオレンジ色のアイシングで覆われたトンブースが店頭に並びます。
カタイフィ (Kataifi)、ギリシャ
ギリシャで親しまれているお菓子の一つ。「天使の髪」とも呼ばれる細い生地(フィロ生地)を焼いて、その上からシロップをかけたお菓子で、生地の中央にはクルミやアーモンド、ピスタチオが入っています。そのルーツは中東にあり、地域によってバリエーション豊かなものが楽しめます。
クレームシュニッタ (Kremšnita)、クロアチア
クロアチアのサモボルで生まれた郷土菓子。カスタードクリームとメレンゲが2層になったクリームをパイ生地で挟んだお菓子です。クロアチアの広い地域で親しまれているものですが、他の地域では冷たく、サモボルでは温かくして食べるのが特徴です。
チュルチヘラ (Churchkhela)、ジョージア
“ジョージアンスニッカーズ”と呼ばれるジョージアの伝統的なキャンディー。糸で一列につないだナッツ類をブドウ果汁に浸し、乾燥させて作られます。長期保存が可能な上、栄養価にも優れているため、かつては軍人や旅人の食糧として食されたことが多かったそう。
ヴィーエ (Wähe)、スイス
スイスのタルト。アプリコットやルバーブ、りんごなどの季節の果物の他、チーズやほうれん草など多種多様なものがあります。復活祭(イースター)の40日前から始まる“四旬節”は肉食を断つ習慣があり、かつてヴィーエはこの期間中に食されることが多かったそう。
スコーン (Scones)、スコットランド
スコーンは、小麦粉やベーキングパウダー、牛乳、バター、砂糖などを混ぜ合わせた生地をオーブンで焼き上げた小型のパンです。
スコットランドのフラットブレッド「バノック」が原型とされており、その名称は、歴代スコットランド王の戴冠式に使用された椅子の土台の石 “The Stone of Scone ” に由来するといわれています。(諸説あり)
ロスコン デ レジェス (Roscon de reyes)、スペイン
スペインのクリスマスのお菓子。ドーナツ型の生地に砂糖漬けしたフルーツやナッツが散りばめられたケーキで、1月6日の公現祭(3名の賢者がキリストの誕生を祝福した日)に食されます。
ケーキの中には陶器の人形や豆が入っており、前者は幸運が訪れ、後者はロスコンの代金を支払わなければならないルールがあるそう。
ポティカ (Potica)、スロベニア
スロベニアの伝統的な焼き菓子。様々な具材が入った生地を型に入れて焼き上げたお菓子で、イースターやクリスマスなど特別な日に食べる習慣があります。
クルミやヘーゼルナッツ、タラゴン(ハーブの一種)、ケシの実、カッテージチーズなど様々な具材が入ったものがあり、その種類は80を超えると言われています。
2021年4月には、伝統的なレシピや製法に基づいて製造された製品であることを示す、EUの「伝統的特産品保証 (TSG) 」に登録されました。
デニッシュ (Danish Pastry)、デンマーク
パイ状の生地を折り込んで焼いたデンマークのペストリー。19世紀オーストリアのパン職人から伝わったことから、デンマーク国内では “Wienerbrød (ウィーン風のパン)”と呼ばれています。リンゴやラズベリー、バニラカスタード、アーモンドペーストなど様々な種類があります。
ドナウヴェレ (Donauwelle)、ドイツ
ドイツ、オーストリアで親しまれている伝統的なケーキ。サワーチェリー、バタークリーム、ココア、チョコレートなどを使用して作られるもので、名称は「ドナウ川の波」を意味します。
生地の色合いがグリム童話「白雪姫」の描写に似ていることから「白雪姫のケーキ」と呼ばれることもあります。
クルムカカ (Krumkake)、ノルウェー
ノルウェーのワッフルクッキー。生地を専用の鉄板で薄く焼き上げ、筒状に巻いて作られます。粉砂糖を振りかけたり、中にクリームを詰めたりして食べるのが一般的で、特にクリスマスの時期に人気のあるお菓子として親しまれています。
クルトシュカラーチ (Kürtős Kalács)、ハンガリー
ハンガリーやチェコ、ルーマニアで親しまれている焼き菓子。ハンガリー語で 「クルトシュ(Kürtős) = 煙突」、「カラーチ(Kalács)= ケーキ」を意味します。 棒にパン生地を巻きつけて回転させながら焼き上げるお菓子で、シナモン・ココア・ナッツなど様々なフレーバーがあります。
シャルロット (Charlotte)、フランス
フランスの伝統的なお菓子。細長いビスキュイ生地の中に、ババロワやフルーツを流し込み、冷やして固めたもの。その名称は、英国王ジョージ3世の王妃 “ソフィア・シャーロット”が身に着けていたボンネット風の婦人帽に似ていることに由来します。(諸説あり)
ベルギーワッフル (Belgian Waffles)、ベルギー
ベルギーのお菓子。甘さ控えめの四角い形をしたブリュッセル・ワッフルと甘くて丸い形をしたリエージュ・ワッフルの2種類があります。街角のスタンドなどでは、フルーツやホイップクリーム、チョコレートソースなど様々なトッピングがされたワッフルが店頭に並べられています。
ラツーシュキ (Racuszki)、ポーランド
朝食メニューの一つとして親しまれているりんごのパンケーキ。りんごの生産量がヨーロッパで一番多いポーランドでは、りんごを使用したデザートや料理が多くあります。
また、ポーランドでは主食といえるほど食べられているじゃがいもと小麦粉で作る「プラツキ」というパンケーキも朝ごはんとしてよく食べられています 。
パステル・デ・ナタ (Pastéis de Nata)、ポルトガル
ポルトガルの伝統菓子のひとつ。丸い生地に卵黄をふんだんに使用したカスタードクリームが入ったタルトで、朝食や軽食に食べられることが多いそう。マカオを経由してアジア地域に広まったものは「エッグタルト」として親しまれています。
パパナシ (Papanași)、ルーマニア
ルーマニアの伝統的なドーナッツ。ルーマニアのフレッシュチーズ「ウルダ」やカッテージチーズ、レモンの皮などが入ったもので、その起源は古代ローマ時代ともいわれています。揚げたてのドーナツの上からサワークリームやジャムをかけていただきます。
ナポレオンケーキ (Napoleon Cake)、ロシア
ロシアの伝統的なケーキ。フランスの郷土菓子“ミルフィーユ”が原型で、1812年ナポレオンのロシア遠征(祖国戦争)の100周年を記念して作られるようになりました。全体を覆うように装飾された細かいパン粉はロシアの雪を表現しており、当初はナポレオンの三角帽を象ったケーキが作られたそう。
キーライムパイ (Key Lime Pie)、アメリカ
アメリカ・フロリダ州発祥のお菓子。グラハムクラッカー・クラストにライム果汁や卵黄、コンデンスミルクを加え、冷蔵庫で冷やして作られます。フロリダキーズ列島で採れるキーライムが使われており、フロリダ州公式のパイとしても認定されています。
グアグアスデパン (Guaguas de Pan)、エクアドル
赤ちゃんの形をした菓子パン。アイマラ語で「タンタ・ワワ」とも呼ばれ、ラテンアメリカ地域で11月2日の死者の日に食されます。エクアドルでは、「コラーダ・モラーダ」という伝統的なフルーツ飲料と一緒に食べる習慣があります。
バタータルト (Butter Tarts)、カナダ
タルト生地にバターや砂糖、シロップ、卵などを加えて焼き上げたカナダのお菓子。その起源は明らかにされていませんが、カナダのレシピに初めて登場したのは1900年代以降。カナダ国内で広く親しまれており、オンタリオ州では毎年“バタータルトフェスティバル”が行われます。
ボロ デ ブリガデイロ (Bolo de Brigadeiro)、ブラジル
ブラジルのチョコレート菓子“ブリガデイロ”で飾られたケーキ。ブリガデイロとは、ポルトガル語で“准将”を意味し、20世紀のブラジルの政治家エドゥアルド・ゴメスに由来します。デザートととしてはもちろん、誕生日パーティーの定番のお菓子としても親しまれています。
1940年代、ゴメス氏が大統領選に出馬した際、資金集めのパーティーで振る舞われたのがこのブリガデイロでした。残念ながら当選には至りませんでしたが、ブリガデイロはブラジルの食卓に欠かせないものとなりました。
コンチャ (Conchas)、メキシコ
メキシコの代表的な菓子パンの一つ。スペイン語で「貝殻」を意味するこのパンの表面は、貝殻模様をした砂糖のコーティングで覆われています。中にクロテッドクリームが入った “コンチャ イ ナタ”もあります。そのままで頂いても、ホットチョコレートに浸して頂いても〇。
ゼリースライス (Jelly Slice)、オーストラリア
オーストラリアとニュージーランドで親しまれているデザート。ビスケット生地にコンデンスミルクのゼリー、フルーツのゼリーの3層で構成されています。伝統的なものはイチゴのゼリーを使ったものですが、他にもマンゴーやパッションフルーツを使用したゼリースライスもあります。
アンザックビスケット (Anzac Biscuits)、ニュージーランド
第一次世界大戦中に誕生したビスケット。オーツ麦や小麦粉、ゴールデンシロップ、ココナッツフレークなどから作られるもので、かつて戦場にいる兵士たちの食料として祖国に残っている女性たちによって作られたといわれています。
アンザックとは、1915年トルコのガリポリの戦いに参加したオーストラリア・ニュージーランド連合軍団のことで、毎年4月25日は彼らを讃え、追悼する日として「アンザックデー」が制定されています。
スフガニヤ (Sufganiyot)、イスラエル
イスラエルの郷土菓子の一つ。苺ジャムがたっぷり入ったドーナツで、ユダヤ教の祝祭 “ハヌカ”に食されます。ハヌカはB.C.1、ユダヤ人がエルサレム神殿を奪還したことを記念するお祭りで、期間中はハヌキアと呼ばれる燭台に1灯ずつ明かりを灯す習慣があります。
ロクム (Lokum)、トルコ
トルコの郷土菓子。15世紀頃からオスマン帝国の宮廷菓子としてまで作られていたもので、世界でもっとも古いお菓子のひとつとされています。
ギリシャや欧米でも親しまれており、英語では “Turkish delight”(トルコの悦び)という名で知られています。
パグリール (Baghrir)、モロッコ
モロッコのパンケーキ。表面に小さな穴がたくさん空いているのが特徴で、生地はセモリナ粉(デュラム小麦を粗挽きした粉)で使用して作られます。バターやはちみつをたっぷりと染み込ませていただきます。
シェチェルブラ (Shekerbura)、アゼルバイジャン
アゼルバイジャンの代表的なお菓子。クルミやヘーゼルナッツ、粗糖(精製していない砂糖)がクッキー生地に包まれた焼き菓子です。
餃子のような見た目が印象的で、生地の表面には幾何学模様が施されています。一口かじるとナッツと粗糖のザクザクとした食感とカルダモンのエキゾチックな香りが口の中に広がります。
パシュマク (Pashmak)、イラン
イランの伝統的な綿菓子。ゴマや砂糖などから作られるもので、その名称はペルシア語で「羊のような」を意味します。基本的には単体で食べられることはなく、デザートや果物などに添えられていることが多いそう。ローズウォーター/サフラン/バニラなど様々なフレーバーがあります。
クルフィ (Kulfi)、インド
インドの伝統的なアイスクリーム。風味付けしたミルクを煮詰めて凍らせたもので、その味わいはとても濃厚。南アジアを中心とした広い地域で親しまれており、ピスタチオやローズウォーター、サフラン、カシューナッツなど様々なフレーバーが楽しめます。
クラパ・タルト (Klapertart)、インドネシア
インドネシア・スラウェシ島の郷土菓子。カスタードクリームの上にメレンゲを乗せ、オーブンで焼き上げて作られます。クリームの中にはココナッツの果汁と卵黄、ラム酒が入っており、甘さの中に香り豊かな風味が口の中に広がります。
ホットク (Hotteok)、韓国
小麦粉の生地で黒砂糖や蜂蜜などを包み、平たく焼き上げた韓国のパンケーキ。その起源は19世紀後半、韓国に移民してきた中国商人によって生み出されたのが始まりであるといわれています。
市場や屋台の定番の軽食としても知られ、甘いもののみならず中にナッツやチャプチェが入ったセイボリー系のものまで種類豊富にあります。
カヤトースト (Kaya Toast)、シンガポール
カリカリに焼いたパンにカヤジャムを塗ったシンガポールのトースト。カヤジャムとは、ココナッツミルクや卵、パンダンリーフを煮詰めて作られたジャムのことを言います。「コピ」と呼ばれるコンデンスミルク入りのコーヒーや半熟卵とセットで提供されているのが一般的です。
その歴史は、20世紀中国・海南省からの移民たちがシンガポールでコーヒーショップのビジネスを始め、そこで提供されたのが始まりであるといわれています。
カオニャオ・マムアン (Sticky Rice with Mango)、タイ
タイの伝統的なデザート。甘く味付けしたもち米に冷たく冷やしたマンゴーを添え、上からココナッツミルクをかけたもので、マンゴーが旬を迎える4月~5月に多く出回るそう。意外な組み合わせですが、タイにはもち米を使ったお菓子が多く存在します。
豆花 (Douhua)、台湾
台湾で親しまれているスイーツ。豆乳を固めたものに、ピーナッツ/タロイモ/タピオカなどのトッピングやシロップをかけたデザートです。
その発祥は中国で、漢王朝時代には豆花の原型が生まれていたそう。台湾ではスイーツとして愛されていますが、中国では食事としてのメニューも豊富です。
ハロハロ (Halo-Halo)、フィリピン
フィリピンの氷菓子。ミルクやシロップをかけたかき氷に、果物や甘く煮た豆・芋類、タピオカ、アイスクリームなど様々なトッピングが乗ったデザートです。その名称は、タガログ語で「ごちゃまぜ」を意味し、実際にかき混ぜて頂くのがフィリピン流です。
チェー (Chè)、ベトナム
ベトナムを代表するデザート。インゲン豆やタピオカ、フルーツ、ココナッツミルクなど多種多様な具材が入ったデザートスープです。路上の屋台や食堂で販売されていることが多く、温かいもの・冷たいもの両方が提供されています。
チェンドル (Cendol)、マレーシア
インドネシア、マレーシア、シンガポール、タイ、ベトナムなど東南アジア地域で広く親しまれているデザート。
山盛りのかき氷の上にはパンダンの葉で着色された緑色のゼリー、ココナッツミルク、パームシュガーなどがトッピングされ、お好みで小豆やドリアン、スイートコーンなどを追加していただきます。
マレーシアもしくはインドネシアに起源があるといわれていますが、詳細は明らかにされていません。マレーシアでは、チェンドルが国家遺産の無形遺産リストの中に組み込まれています。
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出典
・CNN:https://edition.cnn.com/travel/article/world-50-best-desserts
・Travel & Leisure:https://www.travelandleisure.com/food-drink/best-desserts-around-the-world
・tasteatlas:https://www.tasteatlas.com/100-most-popular-desserts-in-the-world
・万国お菓子物語 世界をめぐる101話 吉田 菊次郎 (著)
・ドイツ菓子図鑑 お菓子の由来と作り方: 伝統からモダンまで、知っておきたいドイツ菓子102選 森本 智子 (著)
・イギリス菓子図鑑 お菓子の由来と作り方 羽根 則子 (著)
・イタリア菓子図鑑 お菓子の由来と作り方: 伝統からモダンまで、知っておきたいイタリア郷土菓子107選 佐藤 礼子 (著)
・洋菓子百科事典 吉田 菊次郎 (著)
・THE PASTRY COLLECTION 日本人が知らない世界の郷土菓子をめぐる旅 PART2 アジア編 郷土菓子研究社・林 周作 (著)
・THE PASTRY COLLECTION 日本人が知らない世界の郷土菓子をめぐる旅 郷土菓子研究社・林 周作 (著)
・世界の郷土菓子: 旅して見つけた! 地方に伝わる素朴なレシピ 林 周作 (著)